「就業規則を社員に非公開…それってアリ?ナシ?社労士が解説する実務のリアル」

こんにちは、けりけりです。労務管理担当者、社会保険労務士試験の受験を考えている方、中小企業診断士1次試験の企業経営理論対策を考えている方、会社の労務管理が適正なのかどうかに関心がある方向けに、法令の解釈や実務的な対応についてのトピックを紹介します。

目次

第1回: 就業規則を見せない会社

 就業規則とは、会社が定めた会社のルールブックで、個々の雇用契約を上回る拘束力もち、就業規則より不利な条件での雇用契約の該当箇所は原則無効となり、就業規則の条件が適用されます。

 このような重要な就業規則ですが、入社して以来、就業規則など見たことがないという方は特に中小企業で多いのではないでしょうか。

 そもそも、中小企業では自社内で就業規則を作成できるノウハウもなく、ほとんどの場合、顧問の社労士に依頼をして作成をしているのではないかと思われます。実際のところ、就業規則は、厚生労働省からモデル就業規則というものが公開されており、社労士であっても一から作成するということは少なく、このモデル就業規則を参考に会社ごとの実情に合わせて作成しているというケースがほとんどです。

 そんな就業規則を、従業員に見せたくないという会社側の動機としては単純に他人任せで作成した就業規則の内容を経営者が理解していない(理解するつもりもない)というケースが多いように見受けられます。意図的に就業規則と異なる運用をしているのでなければ、経営者自身がわからないものを従業員に知られると何か上げ足をとられるのではないかという漠然とした不安が就業規則をオープンにする事をためらわせているのではないでしょうか。

 従業員としては、入社して以来一度も就業規則を見せられたことがないというのであれば、会社にとって何かやましいことがあるのではないかと、会社に疑いを持つ原因にもなりますし、そのような対応で労使間の信頼関係など築けるはずもありません。会社側としても、普段から就業規則を棚の奥にしまい込んで見向きもしないという状態であれば、そもそも就業規則の存在が意識の外に追い出されてしまい適切に法改正や事業の実態を反映した変更を行うこともできません。

 会社側としては、人材採用難のこのご時勢、費用をかけずに従業員満足を高め社員定着を促進する施策として是非、就業規則をオープンにしてみてはいかがでしょうか?

その他、就業規則をオープンにしたがらない理由として:

・法令の改正に即した改変が間に合っていない

・事業の変容・規模の拡大が激しく、改変が間に合わず実態と乖離が生じている

・過去に就業規則の紛失等があり、過度に保守的になっている

・意図的に、就業規則と異なる運用をしている事実を知られたくない

などがありえます。

 就業規則の変更があまりに頻繁な場合は、ある程度の期間(例えば年に一度)まとめて変更を行うという運用が現実的かと思います。

また、事業所への備え付けで対応する場合は盗難や紛失対策としてなるべく目立つ色のファイルで、社外持ち出し禁止としたうえで従業員一人一人に配布したり、閲覧するたびに貸出管理表にサインをもらうなどの対策も有効です(社員に周知をしていることの証明にもなります)。

 また簡単にでも入社時のオリエンテーションで就業規則について説明をしておけば納得感が生まれ、その後の労使トラブル回避に役立つのではないでしょうか?

 適切に就業規則を運用することで、労使間の些細なボタンの掛け違えが労使間トラブルに発展することを避け会社を守ること、また従業員がモチベーション高く業務に取り組んでもらい離職防止や人材の確保に役立つことを是非知っていただきたいと思います。

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