こんにちは、けりけりです。労務管理担当者、社会保険労務士試験の受験を考えている方、中小企業診断士1次試験の企業経営理論対策を考えている方、会社の労務管理が適正なのかどうかに関心がある方向けに、法令の解釈や実務的な対応についてのトピックを紹介します。
第2回: 就業規則の届け出
従業員が常時10人以上の事業所では就業規則を所轄の労働基準監督署に届け出ることが必要ですが、この届出の意味は、労使間でトラブルがあったときに備え、従業員が監督署に通報した後で会社側が後付けで規則を変更することがないよう監督署があらかじめ証拠を押さえておく、という意味合いが強いです。
人数が常時10人以上となっているのは、従業者数が少ない会社は家族経営であることも多く、10人未満の会社での労務トラブルの内実は親族内の内輪もめというケースも多いため監督署もそこまでは面倒を見れないということのようです。
この常時10人に、パートは含まれますが、事業場が派遣先であれば派遣社員は含まれません(派遣社員は派遣元でカウントされます)。パートや派遣労働者が含まれるかどうかという点については、10人という人数制限の理由で述べたように労働契約に基づいて労務の提供を行う労働者としての性質の有無で判断されると考えると理解しやすいです。パートとはいえ労働契約は結びますし、派遣社員は派遣元で労働契約を結びますよね。
届け出をする就業規則とは、表紙が「就業規則」と記載のあるものに限られません。上の理屈でいうなら、賃金規則、介護・育児休業規則等(賃金や休日など労働条件にまつわる労使トラブルのもとになるルールの記載があるもの)はすべて届け出の対象となります。
例えば、賃金規則には記載をしていないが、年末年始の出勤に対して特別な手当てを付ける旨を記載した内規があれば、これも届け出の対象となりますし、資格取得に対しての費用負担を定めた内規も広い意味で労働条件といえるでしょう。逆に、内規であっても、稟議の社内ルールなど労働条件といえないものは届け出の対象となりません。
ちなみに、複数の営業所の就業規則をまとめて一括で監督署に届け出ることも可能です。私が経験した話ですが、とある監督署に一括届け出の申請をしたところ、一括申請は監督署内の手続きが煩雑になるのでやめてくれ・・と懇願されました。もちろん、受理が拒否されるようなことはありませんでしたが。届け出る側としての手間やコストは各監督署ごとに鏡をつくる手間が増えたり郵送で届け出るのなら郵送(返信用含む)費用が掛かるぐらいでしょうか。営業所等が2,3か所程度なら一括でなくても大して手間もコストも変わらないでしょう。普段お世話になっている監督署の方々の手間に配慮してあげても良いかもしれません。
なお、届け出には過半数労働組合ないしは民主的な選挙等で選ばれた従業員代表の意見書(任意書式)と、就業規則(変更)届出書(任意書式)、変更の場合は変更前後の就業規則等(該当する規則だけで可)の添付が必要です。変更内容を簡単に説明する文書を添付すればなお丁寧でしょう。
電子でなく紙面で届け出の際は、すべて、提出用と受付印をもらう控え用で2部用意し、郵送の場合、切手を貼った返信用封筒も同封しましょう。

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