人材育成はなぜ重要なのか|離職率低下と生産性向上を現場で実感した話

「人を育てる会社にしたい」と言う経営者や上司は多いです。
その言葉自体は間違っていないし、むしろ大事な考え方だと思います。

でも現実には、その考えが現場まで浸透していない会社が少なくありません。
トップは人材育成の大切さを語る。けれど現場では、売上、欠員対応、クレーム対応、目の前の作業が優先され、育成は後回しにされる。結果として、人材育成は「大事だと言われているもの」ではあっても、「本当に重要な仕事」として扱われていない。僕はそんな場面を何度も見てきました。

そして僕は、このズレをかなり深刻な問題だと思っています。
なぜなら、人材育成を軽視する会社は、単に部下が育たないだけで終わらないからです。離職が増える。現場の負担が偏る。職場の雰囲気が悪くなる。売上や成果にも影響が出る。さらに長い目で見ると、会社そのものが少しずつ衰退していく。今のように人手不足が長期化しやすい時代では、そのダメージはさらに大きくなります。

目次

僕が人材育成を重要視するようになった理由

現場で痛い目を見てきたから

僕が人材育成を重要視する理由は、一つではありません。

人が辞めていく現場を見てきたこと。
教えられずに放置される人を見てきたこと。
怒られてばかりで、自信をなくしていく人を見てきたこと。
そして、自分自身も、人が自分から離れていく経験をしてきたことです。

この経験は大きかったです。
人は、正しいことを言えばついてくるわけではない。
厳しく言えば成長するわけでもない。
関わり方を間違えれば、人は離れていく。
逆に、関わり方を変えれば、人は少しずつ変わることがある。
僕はそれを理屈ではなく、経験として知りました。

学びを実践したら、結果が変わったから

さらに、人材育成で有名な先生のセミナーを受け、中小企業診断士試験の学習の中で、組織論、社会心理学、リーダーシップ論、モチベーション理論を学びました。
その学びを現場で実践した結果、うまくいった経験があります。
だから僕の中では、人材育成はきれいごとではなく、現場を変える力があるものになりました。

今は「辞めたらまた採ればいい」が通用しにくい時代

人手不足が長引く時代になっている

そもそも今の日本は、人材育成を軽く見ていい環境ではありません。
厚生労働省は、今後も高齢化の進行で人手不足が進む可能性がある中、生産性や労働参加率の向上が必要だとしています。

また、2025年版中小企業白書では、人材が「不足していない」事業者のほうが定着率「7割以上」の割合が高く、人材が「不足している」事業者では定着率「3割未満」の割合が高いと示されています。あわせて、人材確保のためには採用した人材の定着率を高める取組が重要だと整理されています。

これからは「育てて定着してもらう」ことが重要

つまり今は、昔のように「辞めたら補充すればいい」では回りにくい時代です。
採用だけで現場を維持するのは難しく、今いる人を育て、定着してもらうことの重要性が高まっています。

小売や現場職ほど人材育成の失敗が現場を弱らせる

忙しい現場ほど悪循環に入りやすい

僕は小売の現場に長くいました。
だからこの問題を、かなり現実的に感じています。

厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、2024年の離職者数は「卸売業,小売業」が1,427.0千人で最も多くなっています。さらに中小企業白書では、不足している職種として販売従業者やサービス職業従業者などの現場職が目立つと示されています。

小売やサービスの現場は、ただでさえ忙しい。
忙しいから育成が雑になる。
雑な育成の中で人が育たない。
育たないまま辞める。
辞めるから残った人の負担が増える。
負担が増えるから、また育成が雑になる。

部下のためだけではない

この悪循環に入ると、現場は確実に弱っていきます。
僕が人材育成を重要視するのは、部下のためだけではありません。
離職防止のため、長期的に見た現場負担の軽減のため、売上や成果への悪影響を減らすため、職場の雰囲気を守るため、そして部下本人の人生のためでもあります。

トップは「人を育てる会社にしたい」と言うが、現場では浸透していない

理念と現場の実態にズレがある

ここが、僕はいちばん問題だと思っています。

多くの会社では、トップが「人を育てる会社にしたい」と言います。
でも現実には、その考えが現場まで十分に浸透していないことが多い。
現場レベルでは、人材育成が本当に重要なものとして扱われているとは言いがたい場面が少なくありません。

現場では日々の業務が優先される

なぜなら、現場では目先の売上、欠員対応、クレーム対応、日々の業務消化が優先されやすいからです。
その結果、「人を育てることが大事だ」と言いながら、実際には育成に時間も余裕も割かれず、現場任せのままになる。教え方も整理されず、評価もされず、結局はその場しのぎの対応になりやすいのだと思います。

厚生労働省の令和6年度能力開発基本調査では、自己啓発支援の実施状況や教育訓練休暇の付与状況から見ても、育成支援は十分に広がっているとは言いにくい状態です。教育訓練休暇の付与は正社員向けで17.4%、正社員以外向けで15.5%にとどまっています。

そのしわ寄せは現場に落ちる

そのしわ寄せは現場に落ちます。
ちゃんと育てろと言われる。
でも余裕はない。
教え方も学んでいない。
それでも結果だけは求められる。

その結果、現場では、褒めない、感情的に叱る、余計な一言を言う、放置するといった関わりが生まれやすくなる。
トップがきれいな言葉を掲げるだけでは、人は育ちません。
現場で人材育成が重要な仕事として扱われず、日々の業務の陰に追いやられている限り、その会社は本当の意味で「人を育てる会社」にはなれないと僕は思います。

管理職の多くが人材育成に悩んでいる

人材育成は一部の人だけの悩みではない

このテーマが必要とされる理由は、現場の悩みが大きいからでもあります。

ALL DIFFERENTの調査では、管理職の悩みとして「部下の育成」が各ステージで最大であり、特に新任管理職では76.4%が部下育成への課題を「とてもよくある・よくある」と回答しています。

つまり、人材育成は一部の人だけのテーマではありません。
多くの管理職が、現実に困っているテーマです。

人材育成を実践して感じた離職率低下と生産性向上

僕が現場で意識していた関わり方

そしてこれは、僕自身の経験とも重なります。
僕も実際、現場で人材育成を意識して実践していた時期に、離職率の低下生産性の向上を経験しました。

僕が意識していた関わり方は、特別なものではありません。
まずは自分でやって見せる。
次にやらせてみる。
そのうえで、できている部分は褒める。必要な場面では指摘する。
ただし、指摘するときは感情的に叱るのではなく、どこが分からないのかを聞きやすい雰囲気をつくり、具体的に伝えることを意識していました。

部下の変化が、現場の数字に表れた

こうした関わり方を続ける中で、部下のモチベーションが上がり、離職率の低下につながりました。
同時に、部下のスキルアップが進んだことで、同じ労働時間の中でこなせる作業量や業務量が増え、人時売上も上がりました。
つまり、生産性が上がったということです。

管理職である僕自身もラクになった

そして、僕にとって大きかったのはここからです。
部下が育ったことで、管理職である僕自身の作業負担が減りました。
これまで自分が抱え込んでいた仕事を任せられるようになり、自分のコア業務に充てる時間が増えました。

人材育成は理想論ではない

僕はこの経験から、人材育成は単なる理想論ではないと思うようになりました。
人を育てることは、部下のためだけではありません。
離職を防ぎ、現場の生産性を高め、管理職の負担を減らし、結果として現場全体を強くする。
だからこそ、人材育成は現場の優先順位の低い仕事ではなく、本来はもっと重要な仕事として扱われるべきだと考えています。

人材育成を軽視すると会社は衰退していく

目の前を回すだけの組織になる

僕が特に強く言いたいのはここです。

人材育成を軽視すると、困るのは部下だけではありません。
現場だけでもありません。
会社そのものが衰退していきます。

まず、人が育たない職場では、一部の人に仕事が集中します。
その人たちが何とか回すから、一見すると問題が見えにくい。
でも実際には、改善する余裕がなくなり、新しいことに挑戦する力も落ちる。
目の前を回すだけの組織になっていきます。

知識と経験が属人化する

次に、知識や経験が属人化します。
できる人だけができる。
分かる人だけが分かる。
その状態が続けば、その人が辞めた瞬間に現場は一気に不安定になります。

組織の更新力が失われる

さらに、若手や新しい人が育たず定着しない状態が続くと、結果として長くいる人だけが残りやすくなります。
ここで言いたいのは、高齢の社員が悪いということではありません。
問題は、年齢構成や価値観が偏り、組織の更新が起きにくくなることです。

新しい人が育たず、同じメンバーだけが残る。
すると、同じ考え方、同じやり方、同じ価値観が固定化しやすくなります。
その結果、考え方が硬直化する。視野が内向きになる。外部環境の変化に気づきにくくなる。これまでのやり方を変えにくくなる。
人手不足が長期化する中で、こうした更新力の低下は、そのまま企業の弱体化につながりやすいと考えています。

人材育成は会社の未来にとって重要な経営課題

部下のためだけの話ではない

人材育成というと、部下のための話に見えるかもしれません。
でも僕は、もっと大きな話だと思っています。

人が育たなければ、離職が増える。
現場の負担が偏る。
売上や成果にも影響する。
職場の雰囲気も悪くなる。
若手や新しい人が定着しない。
組織の年齢構成や価値観が偏る。
考え方が硬直化する。
視野が狭くなる。
変化に対応できなくなる。
そして会社は、少しずつ衰退していく。

だから僕は人材育成を軽く扱えない

だから僕は、人材育成を軽く扱えません。
それは部下本人の人生のためでもあり、現場で働く人たちのためでもあり、教える側が潰れないためでもあり、そして会社が未来に向かって生き残るためでもあります。

僕自身、現場で人材育成を実践した結果、離職率の低下、生産性向上、そして自分自身の作業負担の軽減を経験しました。
人が育つことで、同じ時間の中でできる仕事が増え、人時売上も上がり、管理職が本来やるべきコア業務に時間を使えるようになる。
だからこそ、人材育成は単なるきれいごとではなく、現場を守り、会社を強くするための土台だと思っています。

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