僕は、日本の有効労働人口が減少し続けるこれからの時代、人材育成は会社にとってかなり重要な業務の一つだと思っています。
理由はシンプルで、入社してきた人を育てて定着させることができれば、採用コストの削減だけでなく、業務効率化や組織力の強化にもつながるからです。
逆に、人材育成を軽く見ている会社は、これからますます苦しくなると思っています。
なぜなら、人を育てない会社では、辞める人が増えます。
辞める人が増えれば、そのたびに採用し直さなければいけません。
でも、今の日本は「辞めたらまた採ればいい」が通用しにくい時代に入ってきています。
厚生労働省の令和7年版労働経済白書でも、生産年齢人口は2020年の約7,500万人から2040年には約6,200万人まで減少する見込みとされています。
人手不足は一時的なものではなく、これから先も続いていく構造的な問題です。
だからこそ僕は、今いる人、これから入ってくる人をしっかり育てて、定着させて、戦力にしていくことが、これからの会社には必要だと思っています。
人が減る時代に「育てない会社」は厳しくなると思う
採用だけで回せる時代ではなくなってきた
以前は、人が辞めてもまた誰かが入ってくる前提で回っていた職場もあったと思います。
でも、今はそう簡単な話ではありません。
厚生労働省は、日本の労働市場を「長期的かつ粘着的な人手不足」の状況にあると整理しています。
つまり、人手不足は一時的な波ではなく、今後もしばらく続く前提で考えなければいけないということです。
それなのに、現場ではいまだに「いい人が入ってくるまで待つしかない」と考えている会社が少なくありません。
その間に、現場の負荷はどんどん高くなる
でも、その間に何が起きるかというと、残っているメンバーの負荷が高くなります。
人が足りないぶんを既存メンバーで埋めるしかないからです。
その結果、教育に時間をかけられない。
教える余裕がない。
質問しづらい。
新人が育たない。
育たないまま辞める。
また人を募集する。
こういう流れに入ると、職場は表面上は回っていても、中では確実に非効率になっていきます。
売上が落ちていなくても、現場は弱っていく
売上が下がっていないから問題ないように見えても、メンバーは疲弊している。
改善に時間を使えず、その場しのぎの運営になる。
僕は、こういう職場を何度も見てきました。
人材育成をしない職場では、同じことが繰り返されやすい
新人が育たない職場には、共通する流れがある
人材育成を軽く見ている職場では、だいたい同じようなことが起きます。
新人が入る。
でも、詳しくは教えない。
「見て覚えて」とか「そのうち分かる」で済ませる。
ミスが出る。
すると、「最近の若者は違う」とか「やる気がない」と言われる。
本人は居づらくなって辞める。
そしてまた採用する。
こういう流れです。
辞めた本人だけの問題にしても、会社は変わらない
もちろん、本人側に原因があるケースもあると思います。
でも、それだけで片づけてしまうと、会社側は何も変わりません。
厚生労働省の公表では、令和4年3月卒業者の3年以内離職率は、高卒で37.9%、大卒で33.8%となっています。
若手の早期離職は珍しい話ではなく、今も一定数起きています。
この数字を見て「やっぱり今の若い人はすぐ辞める」と考える人もいるかもしれません。
でも僕は、それだけでは不十分だと思っています。
見直すべきなのは、職場の受け入れ方だと思う
大事なのは、辞めた人を責めることではなく、辞めたくなる職場になっていなかったかを見直すことです。
教え方はどうだったか。
任せ方はどうだったか。
質問しやすい雰囲気はあったか。
できたことを認める関わりがあったか。
こういうところを見直さない限り、同じことは何度でも繰り返されると思います。
採用コストの問題だけではなく、現場の疲弊が大きい
人が辞めると、残った人にしわ寄せがいく
人が辞めると、「また採用しなければいけない」という話になりがちです。
もちろん、それも大きな問題です。
でも、実際に現場でしんどいのは、採用コストよりも、残った人にしわ寄せがいくことの方だと僕は思っています。
人が辞める。
すると、その人の仕事は誰かがカバーしなければいけない。
教育係の負担が増える。
ベテランの手が止まる。
本来やるべき改善や仕組みづくりは後回しになる。
結果として、「人が足りないから、ますます教えられない」という状態になります。
数字に表れにくい非効率こそ危ない
この悪循環が続くと、職場はどんどん弱くなっていきます。
しかも怖いのは、数字に表れにくいことです。
売上が極端に落ちていなければ、問題が見えにくい。
でも実際には、現場のメンバーは疲弊していて、業務は非効率になっている。
それでも何とか回ってしまうから、根本的な見直しが後回しになる。
この状態は、かなり危ないと思います。
外国人労働者が増える時代ほど、会社の育成力が問われると思う
外国人労働者は、すでに現場を支える存在になっている
今後の人手不足を考えると、外国人労働者の存在も無視できません。
厚生労働省の公表によると、令和7年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人で過去最多となっています。
すでに多くの職場で、外国人労働者は欠かせない存在になっています。
実際、都市部のコンビニなどを見ても、外国人労働者が多いのは珍しくありません。
今後はさらに、こうした流れが進んでいくと思います。
採用できたこと自体をゴールにしてはいけない
ただ、ここで大事なのは「外国人を採れば何とかなる」と考えないことだと思っています。
言語の壁もありますし、文化や価値観の違いもあります。
だから、日本人と同じ感覚で、日本人と同じペースで教えればうまくいくとは限りません。
僕自身、外国人技能実習生を含めた育成を見てきた中で感じるのは、受け入れる側が丁寧に関わらないと、戦力化までに時間がかかりやすいということです。
だからこそ、これからは採用力よりも、受け入れて育てる力の方が大事になると思っています。
採用できたこと自体をゴールにしてしまう会社は、たぶんこの先かなり厳しくなるはずです。
中小企業庁の2025年版中小企業白書でも、人材育成の大切さが示されている
人材育成は、現場感覚だけの話ではない
人材育成が大事だというのは、現場感覚だけの話ではありません。
中小企業庁の2025年版中小企業白書を基にした資料では、人材育成の取組を増やした事業者は、そうでない事業者よりも従業員の定着率が高いことが示されています。
さらに、経営戦略と人材戦略を紐づけている企業の方が、そうでない企業より売上高増加率の水準が高いという整理もされています。
人材育成は、会社の将来に関わる経営課題だと思う
この結果を見ると、人材育成は「余裕がある会社がやること」ではないと分かります。
むしろ、人が足りない時代だからこそ、定着率を高めるために必要なこと。
さらに言えば、売上や組織力にも関わってくる経営課題だと思います。
人材育成を後回しにすることは、単に教育が弱いという話ではなく、会社の将来に関わる問題です。
「教えるくらいなら自分でやった方が早い」は、長くは続かない
短期的には正しくても、長期では組織を弱くする
現場にいると、「教えるくらいなら自分でやった方が早い」と思うことがあります。
これはすごくよく分かります。
実際、短期的に見ればその通りです。
教えるには時間がかかりますし、最初はかえって手間が増えることもあります。
でも、その判断をずっと続けてしまうと、人は育ちません。
育たないから任せられない。
任せられないから仕事はベテランに集中する。
ベテランに集中するから余裕がなくなる。
余裕がないからさらに教えられない。
この流れに入ると、組織は少しずつ弱くなっていきます。
人材育成は「未来の効率」をつくる仕事だと思う
僕は、人材育成は「今の手間」と引き換えに「未来の効率」をつくる仕事だと思っています。
最初は時間がかかる。
でも、そこで向き合う。
小さく任せる。
できたことを認める。
少しずつ戦力にしていく。
こういう積み重ねが、将来の現場をラクにしていくはずです。
逆に言えば、人材育成を避けることは、未来の非効率を先送りしているだけだと思います。
まとめ|これからの会社に必要なのは「採用力」だけではなく「育成力」
人を育てられる会社だけが、これから先も回っていくと思う
これからの時代、採用はもちろん大事です。
でも、それと同じくらい、あるいはそれ以上に大事になるのが、人を育てて定着させる力だと僕は思っています。
人は減っていく。
若手の早期離職率は低くない。
外国人労働者は増えていく。
それでも現場は回していかなければいけない。
そう考えると、人材育成を軽く見る会社は、これからどんどん苦しくなるはずです。
辞めたらまた採ればいい。
いい人が来るまで待てばいい。
最近の若者は違う。
そうやって問題を先送りしている間に、現場は疲弊し、業務は非効率になり、組織は弱っていきます。
だからこそ僕は、入社してきた人材を、最初は時間をかけてでも育てて、定着させて、戦力にしていくことが大事だと思っています。
人材育成は、きれいごとではありません。
人手不足の時代に、会社が現場を回し続けるために必要な、かなり現実的な取り組みだと思います。

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